ある早朝のこと
ある朝、新聞を取りに門のところまで行った私は、大きなブーンという音を聞いて、思わずしゃがみこんでしまった。
はちだ。こわいなあと思いながらどこかに行ってくれないかとじっとその音が消えるのを待った。なかなかブーンという音は消えない。約10分くらいしゃがんでいたと思う。そんな風に感じただけでもっと短かったかもしれないけれど私には長く感じた。まだ消えない。「だれか助けて!」
家の中のだれかを呼ぼうと思っても、声がでない。また、10分くらいそこにしゃがんでいた。それでもブーンという音は消えない。狙われているのだろうか?私は意を決しておそるおそるしゃがみながら、中腰のまま玄関のある方へ後ろむきになって移動した。そして、玄関の方に来ると急いでドアを開けてばたんと閉めた。
「あー、助かった!」
私は、家の中の窓から外の様子をのぞいて見た。音は相変わらず聞こえるが、はちの姿は見えない。仕方なく玄関をもう一度ほんの少し開けてそっと外の様子を見てみた。くまんばちだった。くまんばちが私に気が付いたのか、ぱっとどこか遠くへ飛んでいってしまった。
やっと原因がわかった。くまんばちが一生懸命庭の南天の花のまわりを飛んでいたのだ。くまんばちは私を襲ったのではなく、ただひたすら花の蜜を吸っていたのだ。そして、さっきは、私に見られていることに気づき逃げていったのだった。食事の邪魔をしてかえって申し訳ない気がした。
そしてまた別の日。ありが何かの塊に群がっていた。後日それは、くまんばちの死骸だったことがわかった。あのくまんばちかどうかはわからないけれど。そして、ふと別の方に目をやると、せみの抜け殻が2つローズマリーの枝の所にちょこんとあった。そういえば、先日、早朝に庭に水やりをしていたら、あわててせみが飛んでいったっけ。こんなちいさな猫の額ほどの庭で小さな虫のはかない生と死を目にしたようだった。夏が来たと感じた。
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