「若者たち」の歌
私は、母方の祖母が大好きだった。明治生まれ特有のどこかしんの通った、それでいて、物腰の柔らかい品のある祖母が大好きだった。
私が幼いころ、そんな祖母から母へ手紙とともに「若者たち」の楽譜が送られてきた。
何かの本に書かれていたかもしれない。丁寧に五線譜まで手書きで書いてその上に音符が書き写されていた。
最後に3番までのの歌詞も書き添えられていた。
母がピアノが弾けるからと思って母のために一生懸命写したのだろう。
なんでも一生懸命になるところは、母によく似ていた。
幼かった私は、その楽譜を見ながら、弾き語りで「若者たち」の曲を歌ってみた。
その歌を歌えば歌うほど、その歌詞は、まるで祖母から母への応援歌のように思えた。
母は、遠く九州から関西に嫁いできていた。
「君の行く道は 果てしなく遠い
だのになぜ 歯をくいしばり
君は行くのか
そんなにしてまで」
これはわたしの思い入れが強すぎたのかもしれないけれど、その歌には祖母の母への気持ちがいっぱいつまっているように思えた。
祖母が見つけた楽譜がたまたま「若者たち」だったのかもしれない。
けれど、その歌を歌いながら、私は母に感謝の気持ちでいっぱいになった。
当時は決して近いといえない関西に勇気をもって嫁いでくれたんだろうなあと思って。
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